プラスチックって燃え易いから、怖いなー
プラスチックを燃え難くする難燃剤ってモノがあるみたいだけど、どんな原理なんだろう??
プラスチックは、加工し易く、電気絶縁性に優れることから家電製品など多くの工業製品に使われています。
しかし、プラスチックの原料は石油なので燃え易いのです。
それがプラスチックの最大の欠点なのです。
「燃え易い」欠点をもつプラスチックを「燃え難く」するために
開発されたものが『難燃剤』です。
難燃剤がプラスチックを燃え難くする原理を
分かり易く説明するね。
プラスチックが燃える原理(メカニズム)
燃え難くする原理を理解するには、モノが燃えるメカニズムを知る必要があります。
燃焼とは、発熱と発光を伴った酸化反応です。
燃焼が起こるためには、絶対に必要な3つの条件があります。
この燃焼に絶対に必要な3つの条件のことを、燃焼の3要素といいます。
燃焼の3要素とは、「可燃物」、「酸素」、「熱」であり、
この燃焼の3要素すべてが揃った場合にプラスチックは燃焼します。
それでは、次にプラスチックが燃えている状態を説明します。
まず、プラスチックが燃焼している状態をイメージしてください。
プラスチックが燃焼するのは、プラスチックの表面でしょうか?
それともプラスチック全体(表面だけでなく中心部もすべて)が燃焼するのでしょうか?
どちらの答えも間違いです。
プラスチックが燃焼する場合は、プラスチックが個体の状態で燃えているわけではなく、プラスチックから発生したガスが燃えているのです。
プラスチックが燃えている状態を見ていると、まるで個体のプラスチックそのものから炎が上がっているように見えますが、
プラスチックの表面から少し離れた空間で炎が発生しているのです。
それでは、プラスチックの燃焼を時系列に順を追って図で説明します。
プラスチックに炎を近づけるとガスが発生する(熱分解)
燃焼の3要素<ガス・空気・炎>が揃い、ガスが燃える。
炎を消しても、ガスが燃えた熱があるので、燃焼の3要素が維持
プラスチックからガスが発生しなくなるまで燃え続ける
燃焼反応が一旦起こったらしたら、ライターの火を消してもプラスチックの熱分解ガスの燃焼熱がライターの火の代わりに「熱」を担うので継続的に燃焼が続きます。
これを燃焼サイクルといいます。
プラスチックの燃えやすさ・燃え難さの指標
プラスチックにも様々な種類があるから、
燃えやすさや燃え難さは異なるよ。
燃えやすさを数値や記号で表し、
相対的な実力を表す指標があるので紹介するね。
酸素指数(OI値)
酸素指数とは、プラスチックが酸素と窒素の混合ガスの中で継続的に燃焼できる酸素濃度を表したものです。
平地の空気中の酸素濃度は約22%です。
よって、酸素指数が22以下のプラスチックは平地であれば一度燃えるとずっと消えずに燃え続けます。
酸素指数が低いほど、酸素が薄い環境でも燃え続けることができる燃えやすいプラスチックということです。
難燃性UL94規格
難燃性を調べる試験方法の代表格となる試験規格であり、米国の電気用品、電気部品に対する民間規格です。
遅燃性を評価する水平難燃試験HB
自己消火性を評価する垂直難燃試験V2~V0、5VAなどの区分表記があります。
一番燃えにくい(難燃性が高い)のは5VA。
その次に燃えにくいのがV0です。
燃えにくい安全な製品設計をしたい場合はUL-94 V0以上のプラスチックを使った方が良いですね。
難燃剤の種類と難燃原理
難燃剤として効果をもつ元素は、ハロゲン元素、ハロゲンを含む化合物、リン元素、リンを含む化合物、水和金属化合物、さらには窒素を含む化合物などがあります。
なかでも一般に多く使われている「赤リン難燃剤」、「ハロゲン系難燃剤」、「水和金属系難燃剤」について解説します。
赤リン難燃剤
赤リンは消防法の危険物第二類に該当し、マッチ箱の側薬に使われるなど、それ自体は燃えやすい物質です。
しかし、1960年代、プラスチックに混錬するとプラスチックが難燃化することが発見され、難燃剤として利用されるようになりました。
赤リン難燃剤は数μm~数100μmの粉砕形状や球形のものがあり、プラスチックに添加して使用する添加型の難燃剤です。
赤リン難燃剤は、燃焼の3要素のうち 『酸素』と『熱』を低減することで難燃化しています。
赤リンはプラスチックが熱分解して生じた可燃性ガスが燃焼することで生成される水や炭素と反応して、樹脂表面にチャーと呼ばれる難燃炭化層を形成します。
このチャーは酸素を遮断すると共に、輻射熱を断熱し樹脂の熱分解による可燃性ガスの生成を低減させて樹脂の燃焼を抑制していいます。
赤リン難燃剤の難燃原理
赤リン難燃剤は「チャ―」と呼ばれる難燃炭化層を
プラスチックの表面に作り「酸素」と「熱」を遮断して燃えないようにしているんだ。
ハロゲン系難燃剤
ハロゲン難燃剤の形状は粉末、粒状、塊状、ペレット等様々あり種類が豊富です。
その多くが添加型の難燃剤ですが、プラスチックを製造する過程でプラスチックとハロゲン元素を化学的に反応させた反応型難燃剤も一部存在します。
ハロゲン系難燃剤は燃焼の3要素のうち 『可燃物』と『酸素』を低減することで難燃化しています。
樹脂燃焼時にハロゲン系難燃剤が熱分解して生じたHX(ハロゲン化水素)が、樹脂の熱分解ガスが可燃性化する推進役である・OHや・Hをラジカルトラップ(安定化)することで難燃化しています。
更にHXは不燃性なので酸素や可燃性ガスの希釈効果も難燃化に寄与しています。
ハロゲン系難燃剤の難燃原理
ハロゲン系難燃剤はプラスチックから発生する可燃性ガスと酸素が結合するのを邪魔して燃え難くしているよ。
水和金属系難燃剤
水和金属系難燃剤は主に水酸化アルミニウムと水酸化マグネシウムが難燃剤として使われています。
形状・大きさは水酸化アルミニウムが針状、ブロック状、鱗状粉末、粒状、塊状0.2~100μm。水酸化マグネシウムは粒状で0.2~2μmである。
いずれも添加型の難燃剤です。
水和金属系難燃剤は、燃焼の3要素のうち 『可燃物』と『熱』を低減することでプラスチックを難燃化しています。
水和金属系難燃剤はそれ自体が不燃物なのでプラスチックに添加することで添加していないプラスチックに比べて相対的に可燃物であるプラスチックの量を減らす効果があります(石ころ効果)。
更に水和金属系難燃剤は燃焼時に吸熱反応を起こし、プラスチックの熱分解を低減するとともに水を生成します。
この生成された水も気化する際に熱を奪うのでプラスチックの熱分解の低減に寄与しています。
水和金属系難燃剤の難燃原理
水和金属系難燃剤は石ころのように燃えないので、たくさん入れることで燃えやすいプラスチックの量を減らしたり、加熱すると吸熱反応が起こり熱を下げたり、また加熱により水が生成されるので水が気化することで更に熱を奪って燃え難くしているよ。
まとめ
- プラスチックは石油由来で燃えやすい欠点あり
- 燃えやすいプラスチックを燃え難くしているのが難燃剤
- 難燃剤は3種(赤リン難燃剤、ハロゲン系難燃剤、水和金属系難燃剤)に分類。
- 赤リン難燃剤の難燃原理は、難燃炭化層を生成して「酸素」「熱」を遮断。
- ハロゲン系難燃剤の難燃原理は、可燃性ガスと酸素の結合を阻害。「可燃物」「酸素」にアプローチ。
- 水和金属系難燃剤の難燃原理は、プラスチックを減らし「可燃物」を低減することと、吸熱反応と生成した水の気化熱による温度「熱」を下げる
プラスチックを燃え難くする方法や指標が良くわかりました。
燃えにくいプラスチックを使って、安全な製品開発ができそうです。
何事もメリットあればデメリットもあるからね。
プラスチックは成形し易く、電気絶縁性も高いなどメリットも多いけれど、燃えやすいのが最大の欠点。
欠点を理解して改善する方法を知れば怖いものなしだよ。
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