難燃剤が原因で火事になることがあるって聞いたけれども。。
本当かなー
難燃剤って燃え難いものでしょう?
火事が起こるなんて信じられないよ!
プラスチックは石油を原料としているのでとても燃えやすい材料です。
燃えやすいプラスチックを燃え難くするために開発されたのが難燃剤です。
難燃剤のおかげで、
プラスチックの部品が多い家電製品などは
万が一の時でも燃え難く安全に使うことが出来るのです
難燃剤が原因の火災事故
しかし、そんな難燃剤が原因で火災が起きる場合があります。
以下は2010年~2020年までの10年間に難燃剤が原因で発生した
火災事故の累積件数のグラフです。
2010年~2020年の10年間に約2000件
難燃剤が原因で火災事故が起こっています。
難燃剤が原因で火災になった製品とは?
どんな製品で火災は起こているのでしょうか?
難燃剤によって火災が起こった製品(NITE製品事故情報DBより)
・ノートパソコン
・液晶テレビ
・プロジェクター
・電子楽器
・スキャナー
・プリンター
・モデム
・ブルーレイレコーダ
どこの家庭にもある身近な製品ばかりですね。
火災の原因となっている難燃剤の種類は?
難燃剤にはいろいろな種類があります。
火災の原因となった難燃剤は全て同じ種類の難燃剤です。
難燃剤を分類すると以下の3種に分類できます。
難燃剤の種類
2.ハロゲン系難燃剤
3.水和金属系難燃剤
火災はすべて「赤燐(せきりん)難燃剤」が原因で起こっています。
赤燐難燃剤が火災原因になる理由
赤燐難燃剤は水と反応しやすく、水と反応するとリン酸と呼ばれる酸が生成されます。
このリン酸が火災になる原因なのです。
4P (赤燐難燃剤) + 5O2→ P4O10 (五酸化二リン)
P4O10 + 2H2O(水) → 4HPO3 (メタリン酸)
HPO3 + H2O (水)→ H3PO4 (リン酸)
空気中の水蒸気が少しづつプラスチックの中に入っていき、
プラスチック内の赤燐難燃剤と反応し、リン酸が生成されます。
水蒸気はゆっくりプラスチックの中に入るので、
リン酸の生成はゆっくり数年かかるのです。
リン酸は導電性(電気を通す)があるので、
リン酸が生成されたプラスチックはトラッキングと呼ばれる現象が起きて
発火する場合があるのです。
トラッキングとは
プラスチックの表面のリン酸に通電が流れると、プラスチックの表面が電流による発熱でが少し炭化します。
そして、またリン酸が生成されると再び電流が流れ、プラスチックの表面が更に少し炭化します。
これを繰り返すことでプラスチックの表面に強固な炭化通電経路が出来て、
大きな電流が流れることで一気にプラスチックが発火する現象です。
赤燐難燃剤は使えないのか?
赤燐難燃剤が水と反応しやすいことは難燃剤を製造開発している難燃剤メーカはよく知っているので、難燃剤メーカは赤燐難燃剤にコーティングを施し、赤燐難燃剤が水と反応しないように配慮がなされています。
このコーティングされた赤燐難燃剤であれば、水と反応することは無いのでリン酸が生成されるリスクは大きく低減できます。
しかし、海外のプラスチックメーカは少しでもコストを下げるため、コーティングされていない赤燐難燃剤を使うことがあり、このような事故が多発している主因と思われます。
対策
技術者の場合
難燃性プラスチックを用いた製品設計を行う場合には、プラスチックメーカに使用している難燃剤の種類を確認し、もし赤燐難燃剤の場合はコーティングが施されているかを確認した方が良いです。
一般消費者の場合
残念ながら、一般消費者が購入する製品に使用されている難燃剤を調べることは非常に困難です。
唯一、一般消費者ができることは、安心なメーカの製品を選ぶことと、万が一異常を感じたら、直ぐにコンセントを抜いて使用しないようにすることしか方法は無いと思います。
まとめ
- 難燃剤が原因で約2000件/10年の火災事故が発生している
- 火災事故を起こしているのは赤燐難燃剤
- 赤燐難燃剤は水(水蒸気)と反応してリン酸を生成し、リン酸によりトラッキングが起こり発火している。
- コーティングした赤燐難燃剤はリン酸の生成リスクが低い
- 家電製品を購入する場合、一般消費者は信頼できるメーカの製品を購入するほあり得ません
コメント