電流ヒューズの不具合事例と信頼性

発火発煙のような大きな事故にならないように、回路の守護神的な存在である電流ヒューズ。

電流ヒューズも製造上のバラつきや、使用環境のストレスによって故障することがあります。

走る園児
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今回は電流ヒューズのトラブル事例と

故障の原理をわかり易く解説しますね。

この記事は5分程度で読むことが出来ます

ヒューズが断線する原理

電流ヒューズは、電流が導体に流れることで、導体の発熱「ジュール熱」を利用しています。

電流ヒューズの導体のことを可溶体といいます。

過剰な大電流が流れ、ジュール熱により可溶体の融点(固体から液体に変わる温度)を超えると可溶体は溶けて切れます。

これがヒューズが切れる原理の概略です。

走る園児
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詳しくは↓の記事を読んでください

 

しかし、電流ヒューズは過剰な電流が流れない場合でも断線してしまうことがあります。

このような電流ヒューズの断線が電流ヒューズの不具合です。

意図した正常な断線過剰な大電流が流れて断線した場合)と不具合による断線全く別の原因でヒューズが断線した場合)かどうかを見分けることは可能です。

走る園児
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断線した箇所や断線した状態を観察することで

見分けることができます

正常な断線(大電流で断線)の特徴

①断線箇所は可溶体の中心
②断線部の可溶体の先端は丸まっている。(溶痕)
走る園児
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溶けて無くなった可溶体の長さや溶け残った可溶体の溶痕の大きさで、どの程度の電流が流れたのかを判断することが出来ます。

①断線箇所は可溶体の中心

過電流で断線した場合、可溶体の中央部が断線します。

その理由は、ヒューズ(可溶体)に電流が流れるとジュール熱で可溶体全体が均等に発熱するのですが、発熱と同時に放熱も起こっており、ヒューズの両端には「口金」や「はんだ」といった熱伝導性の高い金属部品があるために可溶体の両端は発熱した熱がどんどん吸われて放熱します。

この結果、可溶体の中央部が一番熱くなるので中央部が断線するのです。

断線して消失した可溶体の長さが電流の大きさ

電流が大きいほど溶けて無くなった可溶体の長さは長くなり、

両端に残る溶痕は大きくなるのです。

 

不具合による断線① (通電ON/OFFの繰り返しによる断線)

物体は温度が高くなると体積が膨張します。

ヒューズの可溶体も電流が流れるとジュール熱によって温度が上昇するので、体積が膨張し少し長くなります。

つまり、通電時には可溶体が長くなりたるんでしまいます。

今度は反対に、電流がOFFすると可溶体の温度は下がるので体積が縮小します。

つまり、非通電時にはたるんでいた可溶体がピンと張った状態にもどるのです。

電流がONとOFFを繰り返えすと、可溶体はたるんだりピンと張ったりを繰り返すことになり、可溶体を固定している両端の半田部に繰り返しの応力が加わってしまいます。

このような繰り返し応力が半田部に加わり続けた結果、最終的には可溶体が半田部で断線してしまいます。

 

電流のON/OFFの繰り返しで断線したヒューズの特徴

① 断線箇所は可溶体の付け根(半田部)
② 断線部に溶痕(可溶体が溶けて丸くなった様子)が無い破断面

もし、断線したヒューズが①②の特徴が一致する場合は、まず間違いなく原因は通電ON/OFFの繰り返しによる疲労破壊です。

通電条件やヒューズの選定を見直すと良いでしょう。

不具合による断線②(外部熱による断線)

断線箇所が可溶体の付け根部(半田部)であっても、断線原因が通電ON/OFFの繰り返しではない場合があります。

この場合の破断部には溶痕(溶けて丸くなった状態)が必ず認められる特徴があります。

過剰な電流が流れて断線するような通常のヒューズ断線の場合には、可溶体の中央部が溶けるので、可溶体の中央部に溶痕ができますが、この場合溶痕は中央部では無く可溶体の付け根部(半田部)にできます。

このようなヒューズ断線はヒューズ自体の発熱ではなく、ヒューズの外の熱がヒューズに伝わった場合に生じます。

焼損した製品のヒューズが断線している場合、ヒューズの断線箇所と断線部を観察することで、過剰な電流によって断線したのか?それとも焼損した熱によってヒューズが断線したのか?を判断することが出来るのです。

外部熱によるヒューズ断線の特徴

① 断線箇所が可溶体の付け根(半田部)
② 断線部に溶痕(金属が溶けて玉になった状態)がある

不具合による断線③(ヒューズの経年劣化(信頼性))

あまり知られていませんが、ヒューズも劣化します。

新しいヒューズと長年使われ続けたヒューズとでは、断線し易さが異なり、長年使い続けたヒューズの方が新しいヒューズより断線し易くなります。

なぜ?長年使い続けたヒューズが断線し易くなるのか?

その理由は可溶体の材料劣化です。

可溶体は細かな金属結晶が緻密な状態で構成されているので強固なのですが、通電による発熱で可溶体の温度が高くなると、この細かな金属結晶同士がくっつき粗大化していきます。

粗大化した金属結晶は脆いため細かく緻密な可溶体に比べて断線し易くなるのです。

しかし、このヒューズの劣化モードはヒューズが切れやすくなる方向に劣化するので、製品としては安全な方向への変化なので一般的には許容されている場合が多いです。

問題になるとすれば、正常な電流しか流れていないのにヒューズが断線することが多くなるなど不要な断線のトラブルの原因となります。

 

走る園児
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いかがでしたでしょうか?

実際に電流ヒューズが断線した場合には、

ぜひ、現物を確認して原因を推定してみてくださいね。

もし、不具合による断線が疑われる場合は原因にそった対策をしてみてください。


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