回路基板って何色? と質問されれば、
多くの方が「緑色」と答えるのではないでしょうか。
回路基板が緑色なのは緑色のインクを塗っているからです。
この緑色のインクは「レジストインク」とよばれています。
レジストインクの目的
レジスト(Resist)「耐える」の意味する通り、レジストインクは様々なストレスからプリント基板を守ることが目的のインクです。
レジストインクの主材はエポキシ樹脂と呼ばれるプラスチックです。
それでは、レジストインクをプリント基板に塗布している目的は何なんでしょうか?
レジストインクの機能は大きく2つに分類できます。
①製造工程で必要な機能
②プリント基板が故障せずに長く使い続けることができるための機能
それぞれの機能毎に必要な機能を
もっと細かく解説しますね。
製造工程で必要な機能
ハンダが付いて欲しくない箇所にハンダが付かないように!
ハンダが付いて欲しくない銅パターンにレジストインクを塗布します。
そうすることで、レジストインクがハンダをはじいて、プリント基板のハンダ付け工程で付いて欲しくない銅パターンにハンダが付くのを防ぎます。
特に狭ピッチの部品はハンダ付けをするとハンダ同士が繋がってしまう現象(ハンダブリッジ)が起こりやすいですが、レジストインクを塗布することで、ハンダブリッジが起こり難くなります。
今後、製品は軽く薄く短く小さく(軽薄短小)がトレンドですから、製品内部に収まるプリント基板もますます狭ピッチ化がすすみますからレジストインクの役割はますます重要になりますね。
プリント基板の信頼性向上の機能
パターン間の絶縁機能
プリント基板は銅箔を用いて電気回路(パターン)が作られています。
隣り合うパターンが繋がって電気が流れるとプリント基板上の部品が故障するなど重大な製品故障になってしまうので、隣り合うパターン間に電流が流れないようにパターン間に塗布されているレジストインクが重要な役割を担っています。
レジストインクは電気抵抗が高いエポキシ樹脂を主成分としているため、電気絶縁性が非常に高いのです。
見た目はただの緑色のインクですが、電気にとっては万里の長城のような乗り越え難い壁なのですね。
パターンの腐食防止
プリント基板が組み込まれた製品は様々な環境で使用されるので、銅箔でできたパターンは経年で腐食してしまいます。
パターンが腐食すると色々な不具合の原因になるため、レジストにはパターンを腐食から守る役割があるのです。
15年ほど前に製造されたプリント基板に塗布していたレジストインクと、最近のプリント基板に塗布されているレジストインクは大きく進化しています。
とても防錆性が向上しています。
昔のプリント基板はレジストインクがあってもパターンが腐食する市場不具合は多かったのですが、最近のプリント基板はレジストインクが進化しているので、昔ほど腐食し難くなっているのです。
レジストインクの種類
レジストインクの種類の分類は、硬化方法による分類と塗布方法による分類があります。
個人的には塗布方法よりも硬化方法で分類した方がしっくりくるので硬化方法で分類した方がよいと思います。
今回は硬化方法による分類について解説します。
UV硬化型のレジストインク
UV(紫外線)を照射することで、液状のレジストインクが硬化するタイプのレジストインクです。
UVのみで硬化するので、相対的には他のレジストインクに比べて硬化したレジストインクの塗膜は分子量が小さく、架橋も少ないものが多いです。
つまり、他のレジストインクに比べて膜の物性は脆弱です。
熱硬化型のレジストインク
熱を加えることで、液状のレジストインクが硬化するタイプのレジストインクです。
熱で硬化させますので、UV硬化型と比べると分子量も大きく架橋も増えるものが多いです。
よって、UV硬化型のレジストインクよりも塗膜は強固です。
フォトレジストインク
フォトレジストインクはUVと熱の2種類の方法で段階的に硬化するタイプのレジストインクです。
UVと熱で硬化する樹脂構造を持っているので、硬化した後の塗膜はUV硬化型や熱硬化型に比べて緻密で強固な塗膜になる場合が多いです。
レジストインクの塗布方法と特徴
レジストインクの塗布方法は主に4種あります。
スクリーン印刷
プリント基板の上にレジストインクを塗る箇所は細かいメッシュで塗らない箇所は目の詰まった印刷版(スクリーン)を置きます。
そして、プリント基板の上に重ね置いた印刷版の上に液状のレジストインクを流し、スキージーと呼ばれているヘラでレジストインクを押し広げることで、メッシュ部からにじみ出たレジストインクがプリント基板に塗布(印刷)されます。
利点
・インクの塗布量が少なくて済む(省材料)
・インクの切り替えが簡単(異なるインクを自由に使える)
欠点
・基板のサイズごとに複数の印刷版(スクリーン)が必要
・銅パターンの角の塗膜が薄くなりがち(ピンホールができやすい)
スプレー塗布
粘度の低い液状のレジストインクをノズルからミスト状に噴霧してプリント基板に塗布します。
また、アースに落としたプリント基板に帯電させたレジストインクをミスト状に噴霧して静電気の力で均一に塗布する静電スプレー方式もあります。
利点
・両面(裏表)を同時に塗布することが可能
・基板のサイズが変わっても塗布可能
・均一な塗膜
欠点
・設備が高額
・インクのロスが多い
カーテン塗布
ナイヤガラの滝のように液状のレジストインクをカーテン状に流しているところにプリント基板をくぐらせて塗布する方法
利点
・インクロスが少ない
・基板のサイズが変わっても塗布可能
欠点
・両面同時に塗布は出来ない
ロール塗布
液状のレジストインクを塗ったローラー間にプリント基板を挟み、ローラーを回転させることでレジストインクを塗布する方法。
利点
・両面同時に塗布が可能
・基板のサイズに関わらず塗布可能
欠点
・スルーホールなどの穴にインクが詰まり易い
なぜ?レジストインクは緑色なのか?
これについては所説あります。
筆者がレジストインクメーカに聞いた情報では、緑色が人間の目に優しいからとのことでした。
現在は機械(カメラと画像認識ソフト)で行う場合が多いのですが、昔はプリント基板にハンダ不良などが無いかを人間が顕微鏡や拡大鏡を用いてチェックしていました。
チェックするプリント基板は何百、何千枚のプリント基板をチェックする必要があるので、少しでも疲れを軽減するとのことで緑色が好まれたためとのことです。
いかがでしたか?
これからプリント基板を目にした際には、緑色のレジストインクの硬化種や塗布方式はなんだろう?なんて考えながらじっくり観察しても面白いのではないでしょうか。
コメント