初心者・新人技術者向け! 電流ヒューズの選定手順について

ヒューズは回路に過剰な電流が流れた時に、電流を遮断し部品の故障から守るだけでなく発火発煙などの重大事故を防ぐ、電気回路の安全には無くてはならない部品です。

しかし、ヒューズの選定を誤ると正常な時にでもヒューズが切れてしまったり(誤作動)、異常な時にはヒューズが切れずに部品の故障や発煙発火事故が起きてしまう場合があります。(不作動)

走る園児
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ヒューズは普段切れては困りますが、異常時には切れなくては困るのです。

そんな一見、相反する要求をきっちり満足するヒューズを選ぶ選定手順はとても重要です。

今回の記事では、電流ヒューズを正しく選定する手順を解説します。

結論 ヒューズの選定手順

① 回路電圧よりも定格電圧が高いヒューズを選ぶ
② 回路電圧がDCならDC用のヒューズを選ぶ
③ 電流(定常電流、突入電流)で選ぶ

ヒューズの選定について

① 定格電圧で選ぶ

ヒューズ選びの第一歩はヒューズの定格電圧を確認することです。

ヒューズには使える電圧の上限が決まっています。

この電圧の上限値を定格電圧と言います。

もし、回路電圧よりも定格電圧が低いヒューズを選んでしまうと、ヒューズが破壊し火災や事故になるリスクがあり非常に危険です。

ヒューズを選ぶ際には先ず回路電圧よりも定格電圧が高いヒューズを選びましょう。

② AC・DCで選ぶ

ヒューズにはAC(交流)用とDC(直流)用があります。

ヒューズを入れる回路電圧がACならAC用のヒューズを選び、DCならDC用のヒューズを必ず選びましょう。

間違ってDC回路にAC用のヒューズを使うと何が起こるのか!?

それは事故になる危険があります。

過剰な電流が流れてヒューズが切れて欲しい時にヒューズが切れずに事故になる危険があります。

ではなぜ? AC用とDC用のヒューズを間違えるとヒューズが切れない場合があるのかについて解説します。

走る園児
走る園児

AC回路とDC回路では回路電圧が全く違うから、

ヒューズの切れやすさが全く違うんだよ。

それぞれの回路電圧とヒューズの中の状態を絵を使って解説するね。

AC回路の場合

AC回路には交流電圧が印加されているので、回路の電圧は0Vを中心に変動しています。(東日本は50Hz、西日本は60Hzで変動しています)

この回路の電圧が変動していることがヒューズの切れやすさに大きく影響しています。

正弦波ヒューズが切れる際の電圧波形と電流波形、ヒューズの状態を図を使って説明します。

まず、回路に異常電流が流れることで可溶体が加熱されます。

加熱された可溶体が融点を超えると可溶体は溶けて液体になり、溶けた可溶体は表面張力によって球状になるので、溶けて無くなった可溶体の空間距離が長くなり電流が遮断されるのがヒューズが切れる原理です。

しかし、電流もしぶとく可溶体という導体が無くなっても流れ続けようとする性質があります。

可溶体が無くなっても放電しながら通電し続けるのです。

この現象をアーク放電といい、回路電圧が高いほどアーク放電は起こりやすいのですが、反対に回路電圧が0Vになるとアーク放電は消えてしまいます。

つまり、AC回路の場合は回路電圧が変動しているため、アーク放電が起こったとしても定期的に必ず0Vになるためアーク放電が消えてしまい確実に電流を遮断することが出来るのです。

DC回路の場合

DC回路は直流電圧が印加されているので、交流電圧のような電圧変動はなくほぼ一定の電圧なので0Vになることはありません。

電圧が0Vにならないので、DC用のヒューズはAC用のヒューズよりもヒューズ自体の溶断性を高めた特別仕様にすることでアーク放電を切れるように工夫されているのです。

従って、DC回路に溶断特性が普通のAC用ヒューズを使ってしまうとアーク放電が切れずにずっと通電し続けるので回路が発火するなど事故のリスクが高まり非常に危険です。

③ 電流で選ぶ

ヒューズは「異常な電流が流れた時には確実にヒューズが切れて回路や部品が壊れないよう保護すること」と「正常な電流が流れている時にはヒューズが切れないこと」のどちらも両立させる必要があります。

これらを両立したヒューズを選ぶためには、回路の2つの電流値からヒューズを選ぶことが重要です。

~ヒューズを選定するために必要な2つの回路電流~
1)定常電流
2)突入電流
走る園児
走る園児

これら2つの回路電流からヒューズを選ぶ手順や理由を説明をするね。

1)定常電流

定常電流とは回路が正常な時に流れる電流値のことです。
正常な電流が流れている時に誤ってヒューズが切れてしまわないためには、定常電流よりもヒューズが切れる電流(溶断電流)が高いヒューズを選ぶ必要があります。
ヒューズの溶断電流は一定ではなく通電時間によって変化することを知っておいてください。
その理由はヒューズが切れる原理を考えれば理解できます。
ヒューズは通電による可溶体の発熱による溶融断線なので、同じ電流を短時間流すのと長時間流すのでは、長時間流した方が発生する熱量は大きくなるのでヒューズは切れ易くなります。
つまり、ヒューズの溶断電流は通電時間で変化するのです。
このヒューズの定格電流と通電時間の関係をグラフで表したものを 「Iーtカーブ」と呼び、参考例を以下に記します。
I-Tカーブを見ると最初は時間が長くなるほど定格電流は低くなっていますが、途中から時間が長くなっても定格電流が変化しないようになります。
これは、ヒューズは発熱だけでなく放熱も同時に起こっているためです。
時間が短い時はヒューズの放熱はほとんど発生せず、発熱が支配的であるため、時間が長くなるのに伴い定格電流は下がりますが、放熱が始まると加熱と放熱のバランスがとれて安定するため、定格電流は一定のままとなってしまいます。
正常に切れないヒューズを選ぶ際には、候補のヒューズのIーtカーブに対して回路の定常電流が十分マージンがあることを確認や評価することが重要です。
I-Tカーブの温度ディレーティング

ヒューズが切れる原理は、通電によるジュール熱で可溶体が融点を超えることであることは理解してもらったと思います。

つまり、ヒューズの肝は可溶体の温度なのです。

走る園児
走る園児

ここで質問だよ。

夏と冬ではヒューズの切れ易さは違うかな?

夏と冬ではヒューズの切れ易さは違います。

その理由は夏だと周囲温度が高いので、異常電流が流れた際にヒューズはより早く融点にまで昇温することができます。

反対に、冬は周囲温度が低いので同じ異常電流が流れて昇温しても融点に到達するまで夏よりも時間が掛かってしまうのです。

つまり、周囲温度が高いほど、ヒューズは切れやすくなり、反対に周囲温度が低いとヒューズは切れ難くなるのです。

周囲温度が変わると同じヒューズのI-Tカーブがどのように変化するのか以下に例を記します。

周囲温度が高くなればなるほどI-Tカーブは下にさがっているのが分かると思います。

このような現象を「温度ディレーティング」といい、ヒューズの仕様書には以下のような直線グラフが示されています。

ヒューズの選定する際には、機器の使用環境温度範囲においてヒューズが誤作動や不作動を起こさないよう温度ディレーティング確認することが大切です。

2)突入電流

回路に電源投入した際に回路に流れる電流と突入電流といいます。

突入電流は定常電流とは全く異なり、毎回異なる複雑で過渡的な電流波形が流れます。

突入電流は定常電流に比べて非常に短時間に生じる電流波形です。

ヒューズを選ぶ際には、この複雑で短い時間の突入電流が流れても切れないヒューズを選ぶ必要がありますが、非常に短い時間なので、定常電流の評価で使ったI-tカーブは使えません。

突入電流が流れてもヒューズが切れないか評価する際には縦軸は電流ではなくジュール積分値I^2×tを用いたI^2×tーtカーブを使います。

I2-tカーブ

I^2×tーtカーブの使い方

機器の電源を入れた際の突入電流をオシロスコープを用いて測定します。

突入電流は定常電流になるまでの電流です。

機器の負荷や回路の部品などの影響で下図のような複雑な波形をしています。

ヒューズのI^2×tーtカーブで評価するための突入電流のI^2tは上図で青く塗りつぶした突入電流の面積を計算する必要があります。

走る園児
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突入電流の面積を計算する方法を解説するね。

難しくないから、是非理解してね。

①最初の突入電流の山の面積(I^2t)を求める

オシロスコープのカーソル機能を用いて、最初の山の電流実効値(I1rms)と時間t1を求めます。

そして(I1rms)^2×t1を計算します。

②次の突入電流の山までの面積(I^2t)を求める

オシロスコープのカーソル機能を用いて、次の山までの電流実効値(I2rms)と時間t2を求めます。

そして(I2rms)^2×t2を計算します。

③最後の山までの面積(I^2t)を求める

オシロスコープのカーソル機能を用いて、②の計算を最後の山まで行う。最後は、最後の山までの電流実効値(Inrms)と時間tnを求め、(In rms)^2×tnを計算します。

④求めた機器のI^2ーtから十分に余裕があるヒューズを選ぶ

I^2ーtカーブのグラフに求めた突入電流の最初の山のI^2×tから順に点を書き込み、点どうしを線で繋ぐ(これが機器の突入電流のI^2ーtカーブです)

この機器の突入電流のI^2ーtカーブに対して十分にマージンがあるI^2ーtカーブを持った電流ヒューズを選択する。

このマージンは多くの電流ヒューズメーカは50%を推奨しています。(電流ヒューズのI^2ーtを100%とした場合に機器の突入電流のI^2ーtが50%になるように)

このマージンのことをディレーティングと言います。

 

まとめ(電流ヒューズの選定手順)

① 回路電圧よりも定格電圧が高いヒューズを選ぶ
② 回路電圧がDCならDC用のヒューズを選ぶ
③ 電流(定常電流、突入電流)で選ぶ
走る園児
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電流ヒューズの選定するためには、ヒューズの形状、サイズ、他にも作動スピードなど他にも考慮すべき点はありますが、主な選定項目を解説したよ。

この記事を書いた人
走る園児

京都の国立大学工学部卒
22歳:東証一部上場の大手電機部品メーカに入社
29歳:開発部の管理職
35歳:東証一部上場の大手家電メーカに技術者として転職
 専門は電気、機械、金属材料、高分子材料、統計学
 学会・講演会なども活動。
 特に故障原因の解析が何よりの好物!!

ランニングが趣味の園児(エンジニア)です。

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