ガス腐食試験とは? 絶対に知るべき1つのポイント

電化製品には電気を流すためなど多くの金属が使われていますが、

それらの金属が腐食すると電気が流れ難くなり故障してしまうのです。

走る園児
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電気製品は人よりもデリケートなのです。

電化製品の金属を腐食させる原因となるのは、温泉地などの空気中に含まれている腐食ガスです。

このような腐食ガスに対する耐性を調べる試験を「腐食ガス試験」といいます。

腐食ガス試験は一般的な環境試験と同じ感覚で試験を行うと大きな失敗につながります

腐食ガス試験で絶対にやってはいけないことをわかりやすく解説します

<この記事は約5分で読むことができます>

腐食ガスが多い場所

私たちが生活する環境には腐食性ガスがある場所は意外に多いのです。

走る園児
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腐食性ガスが多い環境では、

電気製品や自動車などが

短時間で故障することがあります。

硫黄系ガスの多い場所
温泉地、下水処理場、製鉄所、ゴムや紙を多く扱う場所など
NOx、SOxガスが多い場所
自動車の通行量の多い道路近く、地下駐車場、重油ボイラーや発電機が置いてある場所
オゾンガスが多い場所
レーザープリンター近く、高圧放電がある場所
アンモニアガスが多い場所
トイレ、人や動物が多い場所

腐食ガス試験とは

腐食ガスの種類や想定される環境(屋内、屋外、特殊な環境)によって、腐食ガス試験は多くの種類がありますが、JIS規格にある代表的な腐食ガス試験を以下の表にまとめました。

温度と湿度の条件は一般的な環境試験と同じですが、腐食ガス試験には様々な腐食ガスの濃度が試験条件に追加されています。

試験条件だけをみると一般的な環境試験と大差ないように感じますが、同じ感覚で試験をすると試験結果が大きくバラついてしまい、全く再現性のない試験をしてしまいます。

走る園児
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それでは何が腐食ガス試験は違うのか?

解説しますね。

絶対にやってはいけないこと

低温放置試験や高温放置試験、高温高湿試験のような温度湿度変化が無い一般的な環境試験の場合は、試験条件の温度湿度時間を守りさえすれば、誰がやっても同じ試験を行うことができます

しかし、腐食ガス試験の場合の試験条件は、温度湿度時間、ここまでは一般的な環境試験と同じですが、加えて腐食ガスの種類腐食ガスの濃度が試験条件として定まっています。

走る園児
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しかし、腐食ガス試験の場合は

試験条件だけを守っても

絶対に同じ試験は出来ません

腐食ガス試験を再現性良く試験を行うためには、定められた試験条件を同じにすることは当然ですが、それに加えて試験試料の数や大きさを同じにすることがとても大切なのです。

 

腐食ガス試験は、試験試料腐食ガス化学反応(腐食)をさせること目的とした試験です。

わかり易く例えて説明しますね。

試験試料お腹を空かせた男の子とすると、

腐食ガスおにぎりです。

 

腐食試験の条件が、腐食ガスの濃度がおにぎり6個の環境に試験試料(男の子)を2人いれた場合を考えてみましょう。

男の子はおにぎり(腐食ガス)を一人で3個食べることができるので、とても満腹(たっぷり腐食)になります。

 

次の試験条件を考えてみましょう。

おにぎり(腐食ガス)は同様に6個ですが、男の子(試験試料)が2人から6人に増えたとします。

その場合、男の子(試験試料)一人はおにぎりを1個しか食べられなくなりますので、

男の子は満腹にはならず不満顔です。(つまり、あまり腐食しない)

どちらの試験条件も腐食ガスの濃度(おにぎりの数)は同じですが、

そのおにぎりを食べる男の子(試験試料)の数が違うと試験の結果は全く違う結果に

なってしまうのです。

試料の数や大きさが同じであっても、材料が異なる場合も要注意です。

樹脂(プラスチック)自体が腐食ガスで腐食することはありません場合が、

樹脂内部に腐食ガスが吸着されて、腐食ガス試験のガス濃度を低下させる要因になるのです。

一方、一般的な環境試験は試験条件さえ同じであれば、試験試料の数や大きさは全く関係ありませんが(温度変化を伴う試験の場合を除く)

腐食ガス試験は、試験条件だけでなく試験試料の数や大きさ、材料の種類をまったく同じにすることが試験の再現性には重要です。

走る園児
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再現性の高い腐食ガス試験を行うために重要なことは、

温度湿度腐食ガスの濃度のような試験条件をきっちり守るのは当然ですが、

それに加えて試験試料の数大きさ、材料などについても同じにすることがとても重要です。

 

腐食ガス試験のコツ

試験条件(温度、湿度、腐食ガス濃度)と試験試料を全く同じにすることが出来れば、試験の再現性は保たれるのですが、実際はいろいろな試験試料を評価する必要があるので、試験試料が同じになることはほとんどありません。

では、試験試料が変わっても、同じ腐食ガス試験をするためにはどうすれば良いのか?

走る園児
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試験ストレスの度合いを確認することができる物差しの役割になる金属板を試験試料と一緒に試験槽に入れてあげることで解決できます。

硫化水素ガスを用いた腐食ガス試験の場合を例にして説明します。

硫化水素ガスは金属を硫化腐食させる性質があります。

特に硫化しやすい金属は銀(Ag)なので、硫化ガス試験における腐食ストレスの物差しは、銀の板が最適です。

銀の板を試験試料と一緒に硫化ガスを入れた試験槽に入れると黒く変色します。

銀の板の全てが黒く変色しているわけでは無く、表層面だけが黒く変色します。

この銀の板の表層面のみの黒い変色は試験時間が長くなればなるほど、より厚みを増していくのです。

試験槽の中には硫化ガスがあり、それが銀の表面で銀と接触することで銀と化学反応を起こし、硫化銀になります。

この化学変化によって発生した硫化銀は黒色をしているため、銀が流下した部分は黒く変色するのです。

そして、試験時間の経過に伴い、銀の内部層に進行してゆき、どんどんと黒い硫化銀の層が厚くなっていくのです。

この硫化銀の厚みは試験ストレス(濃度と経過時間)と比例関係なので、硫化銀の厚みを調べれば、その時点でどの程度の試験ストレスになっているかがはっきりとわかるのです。

つまり、前回の腐食ガス試験完了時点の硫化銀の厚み今回の腐食ガス試験完了時の硫化銀の厚みが同じであれば、全く同じ試験ストレスの試験ができているといえます

試験試料が異なることで試験時間は同じではないかも知れませんが、銀板の硫化銀厚みを確認することで、全く同じ試験ストレスの試験が確実に行えたか判断できるのです。

 

でも?硫化銀の厚みってどのように測ればよいのか?

毎回、銀の板をカットして、断面の黒い層の厚みを測定するのか?

走る園児
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銀の板をカットしなくても非破壊で簡単に硫化銀の厚みを知ることができます。

銀の板の重さ(質量)を測ることで硫化銀の厚みが計算でわかります。

銀はAg。 硫化銀はAg2S の化学式で表せるように、

銀の板が硫化するとAg(銀)にS(硫黄)が引っ付きますから、引っ付いたS(硫黄)の分だけ銀の板は重たくなるのです。

試験前の銀の重さを測定しておいて、試験後に黒くなった銀の板の重さとの差は、銀の板に引っ付いた硫黄の重さなのです。

銀に硫黄が引っ付き、硫化銀になる化学式は次のように表すことができます。

このような考え方から、硫化銀の厚みは以下の式で求められます。

 

まとめ

・腐食ガス試験は試験条件(温度、湿度、腐食ガス濃度、時間)だけでなく、試験試料(数、大きさ、材料)も試験ストレスに大きく影響するので、同じ時間で試験を完了させるためには双方の条件を同じにする必要がある。

・腐食ガス試験の試験ストレスを合わせるには、金属板を試験試料と一緒に入れて、金属板の腐食厚みを同じにすればよい。

・金属板の腐食厚みは金属板の試験前後の質量差で計算できる。

走る園児
走る園児

腐食した金属の観察にもとても便利です。

ちょっと高価ですが、安いルーペとはレンズが全く違うよ

視野の明るさに驚くと思います

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