高温放置試験とは? 目的と注意点、事例の紹介

私たちの身の回りにある製品はいろいろな環境で使われています。

例えばスマホが耐えなければならない環境を例にあげてみます。

スマホが耐えている環境(ストレス)

・人が持ち歩く際の「振動

・机に置いた際や落下させた際の「衝撃

・寒い冬の屋外から温かい屋内に入った際の「結露

・暑い夏に車のダッシュボードに置いた際の「高温

・お風呂で動画を見たことによる「水滴

などなど

ざっと考えただけでもスマホが耐えなければならない環境は多岐に及びます。

これら様々な環境に耐えられるのか? スマホを開発しているメーカでは、これらの環境ストレスを模擬した試験を行い、スマホが市場で故障しないことを確認しています。

このような環境ストレスを模擬した試験のことを環境試験といい、多くの種類の環境試験が存在しています。

今回の記事では、環境試験の中から高温放置試験(耐熱試験)について詳しく解説します。

今まで高温放置試験を実施した経験が無い方はもちろんですが、

何度か高温放置を実施した経験がある方も是非読んで頂きたい内容です。

走る園児
走る園児

この記事は約1分で読むことが出来ますよ

高温放置試験とは

JIS(日本工業規格)によると高温放置試験とは

高温中に放置したのちの部品の状態を調べる試験”と記されています。

走る園児
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もう少し丁寧に試験の目的を説明するね

高温放置試験とは

部品やそれを構成する材料(金属、プラスチックなど)、グリスやオイルなどの副資材が高い温度によって物理的や化学的な性質に変化が生じないか?
また、高温になることで生じる寸法変化によって問題が生じないか? を確認することを目的とした試験です。
走る園児
走る園児

高温放置試験を実施したおかげで見つけることができた

不具合事例をいくつか紹介するね

高温放置試験で不具合を確認した事例

事例1)グリスが劣化

駆動部の潤滑剤として塗布していたグリスが高温放置試験で熱劣化し潤滑性能が低下

原因:使用していたグリスの耐熱温度が低かったことが原因でした。

対策:耐熱温度の高いグリスに変更

 

事例2)プリント基板に焦げ発生

高温放置試験後のプリント基板のあちこちに焦げたような変色が発生

原因:プリント基板に部品をハンダ実装するために使用したフラックスが高温放置試験によってこげ茶に変色したことが原因でした。

対策:フラックスの変色なので害は無いのですが、焦げ(発火)との誤解を招く可能性があるので、変色しないフラックスに変更

 

事例3)積層セラミックコンデンサが割れ発生

プリント基板に実装していた積層セラミックコンデンサに割れが生じました。

原因:金属の板に大きなプリント基板を固定していた。 高温放置によって金属、プリント基板のそれぞれが膨張したが、金属に比べてプリント基板の方がより膨張した結果、プリント基板が曲がり、実装していた積層セラミックコンデンサが割れてしまった

対策:金属の板への固定をルーズにして、高温時の熱膨張を吸収できるように変更した。

 

高温放置試験の注意点

・寸法変化は高温に晒されている時だけ確認できる

高温時の寸法変化は高温に晒されている時だけ寸法変化を確認できます。

試験サンプルが常温に戻った状態では寸法は元に戻るので寸法変化を確認することが出来ません。

事例3(積層セラミックコンデンサに割れ)の場合も常温ではなく、高温に放置している試験サンプルを調べることで、初めて割れの原因であった試験サンプルの寸法変化を見つけることが出来ました。

・不要なものを恒温槽内に入れない

特にゴムやプラスチック、接着剤などの高分子材料には高温になると揮発しやすい物質が含まれている場合が多いです。

恒温槽内は密閉されていることが多いので、これらの揮発した物質(アウトガス)が恒温槽内に溜まり高濃度になります。

この溜まって高濃度になったアウトガスによって、本来は起こりえない不具合を誘発する場合があるので注意が必要です。

高温放置試験をする場合には、試験サンプル以外は恒温槽内に一緒に入れないように心がけましょう。

走る園児
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如何でしたか?

高温放置試験の目的や効果事例を理解いただけたのではないでしょうか?

注意点には注意しながら、目的に沿った試験実施と評価をお願いします


走る園児
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