私たちの身の回りにある製品は様々な環境で使用されています。
スマホを例にスマホが耐えなければならない様々な環境をあげてみたいと思います。
スマホが耐えている環境(ストレス)
・人が持ち歩く際の「振動」
・机に置いた際や落下させた際の「衝撃」
・寒い冬の屋外から温かい屋内に入った際の「結露」
・暑い夏に車のダッシュボードに置いた際の「高温」
・お風呂で動画を見たことによる「水滴」
などなど
ざっと考えただけでもスマホが耐えなければならない環境は多岐に及びます。
これら様々な環境に耐えられるのか?
このような環境ストレスを模擬した試験のことを環境試験といい、多くの種類の環境試験が存在しています。
今回の記事では、環境試験の中から「低温放置試験」について詳しく解説します。
今まで低温放置試験を実施した経験が無い方はもちろんですが、
何度か低温放置を実施した経験がある方も是非読んで頂きたい内容です。

この記事は約3分で読むことが出来ますよ
低温放置試験とは
JIS(日本工業規格)によると低温放置試験とは
”低温中に放置したのちの部品の状態を調べる試験”と記されています。

つまり、部品が低温になった際に問題にならないかを確認する試験です。
低温になると物質はどうなるのか?
物質は温度が低くなると、硬くなり、柔軟性を失っていきます。
つまり、低温になるとモノは硬脆(かたもろ)くなり、簡単にひび割れしやすくなるのです。
ゴムやプラスチックについて
ゴムのような伸縮性に富んだ物質であっても、低温になると弾性が失われて硬脆くなります。
ゴムの弱点は高温といわれることもありますが、低温もゴムにとっては弱点です。

ただし、
低温が弱点になる程度は
ゴムの種類によって差がありますよ。
NBR(二トリルブタジエンゴム)、SBR(スチレンブタジエンゴム)、EPDM(エチレンプロピレンゴム)といったゴムは低温でも比較的堅脆くなり難いので、低温があまり弱点にならないゴムです。
反対にもっとも低温に弱いゴムはFKM(フッ素ゴム)が有名です。
フッ素ゴムは非の打ちどころのない優秀なゴムなのですが、唯一の弱点が低温に弱いことです。
スペースシャトル・チェレンジャー号の爆発事故の原因は正にフッ素ゴムが低温で弾性を失ったことによる燃料漏れでした。
低温ではフッ素ゴムは要注意です。
ゴムだけでなくプラスチックも低温になると結晶化やガラス転移点が関係する温度から急激に堅脆くなるので注意が必要です。
金属について
ゴムやプラスチックのような高分子材料だけでなく、金属も同様にある温度から急激に堅脆くなります。
この温度のことを「延性脆性遷移温度」といい、この延性脆性遷移温度より低い温度では突然割れてしまうことがあるので注意が必要です。
また、この延性脆性遷移温度は金属の厚みによって大きく変化します。
一般に厚みが厚いほど延性脆性遷移温度は高くなりますので、厚みのある金属を低温で使用する場合は十分注意が必要です。
一例をあげると炭素鋼の場合、延性脆性遷移温度と厚みの関係は、
板厚10mmはー28℃だったものが、2倍の板厚20mmになると一気にー8℃まで延性脆性遷移温度が上昇してしまいますので、注意が必要です。
タイタニック号の沈没も低温で船体の材料であった鋼が堅脆くなっていたところに、氷山との衝撃が加わり割れたことが原因だったようです。

物質は低温になると堅脆くなるよ。
ある温度から一気に堅脆くなるので注意してね。
低温放置試験は部品や製品の材料、物質が堅脆くなることで不具合が生じないかを試験確認するための試験なのです。
他にも高温放置試についても解説しています。

低温放置試験で壊れた部品の観察にとても便利だよ
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