熱衝撃試験装置の種類と原理(仕組み)と絶対にダメな4つの使い方

スマートフォンや家電製品などは簡単に壊れては困りますよね。

メーカでは、製品が想定している環境や年数で壊れないことを確認しています。

そのような試験を行う際に必須なのが熱衝撃試験装置です。

筆者(走る園児)が勤務する会社(メーカ)でも熱衝撃試験装置は20台保有しており、日々多くの技術者が新製品の試験を行っています。

熱衝撃試験装置は電子レンジのような感覚で簡単に操作することができるので、正しく試験ができていると勘違いしてしまう新人技術者をよく見ます。

間違った使い方をしてしまうことで、製品評価結果を見誤ってしまうリスクがあります。

今回の記事は熱衝撃試験装置の原理(仕組み)の解説と新人技術者が良くやってしまう間違った使い方を紹介します。

走る園児
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5分程度で読めますよ。

ぜひ、最後まで読んでくださいね。

熱衝撃試験装置とは

熱衝撃試験装置 <出展:ESPEC(株)HP>

熱衝撃試験装置 <出展:ESPEC(株)HP>

熱衝撃試験装置をひと言で表現すると、真冬の南極と真夏の砂漠を瞬時に行ったり来たりする装置です。

物質は温度が高くなると膨張し、

反対に温度が低くなると収縮します。

この温度で膨張収縮する特性は、物質によって大きく異なります。

金属も膨張収縮しますが、金属に比べてプラスチックは圧倒的に膨張収縮し易いのです。

ほとんどの製品は一つの物質だけで作られておらず、様々な物質が組み合わさって作られています。

様々な物質が組み合わさっているということは、温度の変化による膨張収縮の程度も様々であることから、温度変化があると異なる材料の接合面では歪みが生じます。

この歪みが温度変化のたびに繰り返し加わることで、割れたり変形するなどの故障になるのです。

この温度変化による繰り返し歪みに対する耐力を試験評価する装置が熱衝撃試験装置です。

熱衝撃試験装置の種類と原理(仕組み)

熱衝撃試験装置の種類は大きく分類すると気槽式液槽式に分けられます。

それぞれの熱衝撃試験装置について解説します。

気槽式の熱衝撃試験装置

気槽式の熱衝撃試験装置も2つ種類が存在します。

ダンパー切り替え方式の気槽式熱衝撃試験装置

現在、最もポピュラーな熱衝撃試験装置です。

多くの場合、熱衝撃試験といえばこのタイプの熱衝撃試験装置で試験を行うことがほとんどです。

ダンパー切り替え方式の熱衝撃試験装置の原理は、下図のように評価する試験サンプルを入れる空間(試験室)と高温の空気で満たされた空間(高温室)と低温の空気で満たされた空間(低温室)の3部屋が存在しており、試験室と高温室および低温室は断熱されたダンパー(扉)で区切られていますが、試験を開始すると、試験室を高温にする時は高温室側のダンパーを開いて、一気に高温の空気を試験室に流し入れることで、試験室の気温を急激に上昇させます。

反対に試験室を低温にする場合は、高温室側のダンパーと閉じて、低温室側のダンパーを開いて、一気に低温の空気を試験室に流し入れて試験室の気温を急激に低下させるのです。

このように予め準備された高温室と低温室のダンパーを切り替えることで、試験室の温度を急激に変化させるタイプの熱衝撃試験装置をダンパー切り替え式の気槽式熱衝撃試験装置といいます。

サンプル移動方式の気槽式熱衝撃試験装置

日本の環境試験装置メーカではあまり製造されていませんが、欧米の環境試験装置メーカでは何故か、ダンパー切り替え方式よりもこのサンプル移動方式の気槽式熱衝撃試験装置が多いように思います。

このサンプル移動方式は、サンプルを入れた籠が高温槽と低温槽を移動して行ったり来たりすることでサンプルに急激な温度変化を与える試験装置です。

この方式はダンパー切り替え方式に比べて、より急激な温度変化を加えることができる傾向にありますが、サンプルを移動させる際の振動ストレスも同時に加えてしまう欠点があります。

サンプル移動式の熱衝撃試験装置を使う場合は、移動時の振動ストレスが加わることも十分に理解した上で使うようにしましょう。

液槽式の熱衝撃試験装置

先ほど紹介した気槽式の熱衝撃試験装置は高温、低温の空気を使って試験サンプルに急激な温度変化(熱衝撃)を与える方式でしたが、

液槽式の熱衝撃試験装置は高温、低温の液体を使って試験サンプルに急激な温度変化を与える方式です。

液体を熱媒体とするため、気槽式に比べ急峻な温度変化が与えられることが特長です。

液槽式の熱衝撃試験装置の原理(仕組み)は高温低温の2槽で構成され、試験サンプルを入れる籠をエレベータ機構で交互に入れ替えることで、急激な温度変化(熱衝撃)を試験サンプルに加えます。

高温低温の液槽を試験サンプル籠が移動する時間は通常10秒程度で試験をすることが多いです。

装置に使用する液体は、高い電気絶縁性、低表面張力、不凍性を有した不活性な液体を使用しています。

この液体は非常に高価なので、液槽式の熱衝撃試験を行う際のデメリットとなる場合が多いです。

また、市場でのさまざまな温度変化に比べ、液槽式の熱衝撃試験による温度変化が大きすぎて市場故障の再現にならない場合があることも液槽式の熱衝撃試験装置を使用する場合には理解しておく必要があります。

しかし、気槽式の熱衝撃試験に比べて圧倒的に温度変化を早めることができることから、短時間に最も弱い箇所を見つけるには非常に有効な方法です。

熱衝撃試験装置でやってしまうダメな使い方(4つ)

ここでは、最もポピュラーなダンパー切り替え式の気槽式熱衝撃試験装置を使う際によくやってしまう絶対ダメな使い方を解説します。

走る園児
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知らずにやってしまう技術者は多いよ。

ぜひ、覚えておこうね

試験サンプルは風の流れを妨げないように置くこと

ダンパー切り替え方式の肝(きも)は、いかに早く試験室内の空気を高温室や低温室の空気に入れ替えれるかがポイントなのです。

だから、試験室内に入れる試験サンプルは風の流れを妨げないよう置き方に気を配ることが重要です。

試験サンプルの熱容量は小さくすること!

熱衝撃試験は試験サンプルの温度を急激に変化させる試験ですから、温度変化し易くなるように試験サンプルの熱容量はできるだけ小さくしましょう。

スマホの熱衝撃試験を行う場合で説明すると、

試験室にスマホを1個だけ入れて試験をするのと、

スマホ100個入れて試験をするのでは、どちらの方が温度変化が急になるでしょう?

答えは皆さんお分かりのとおり、スマホ1個の方が温度変化が早くなります。

ということは、スマホ100個を入れると温度変化が緩やかになってしまい期待しているストレスを与えていないことになってしまうリスクがあるのです。

試験サンプルは出来るだけ、無駄な部分は除いて熱容量を極力下げるように心がけることが重要です。

試験開始前に1度、試験サンプルの温度が期待している温度変化になっているかを熱電対をつけて測定することを強くお勧めします。

また、熱電対を取り付ける際は試験サンプルの表面ではなく、できるだけ中央部の温度変化し難い箇所を狙って温度測定することが大切です。

試験サンプルは試験室の床に直置きしない!籠に入れること

これも、よくやってしまうミスです。

理由は前途と同じです。

試験室の床や壁はステンレスで出来ていますが、試験室の籠に比べて表面積が広く熱容量が大きいのです。

せっかく試験サンプルの熱容量を最小化しても、熱容量の大きい床に直置きしてしまうと、温度変化が緩やかになってしまうのです。

試験サンプルは専用の籠にいれるようにしましょう。

試験室内は強風!試験サンプルは飛んでいかないように!

ダンパー切り替え式の熱衝撃試験室は、試験室内の空気を一気に入れ替えて温度を急激に変化させているので、かなり強い風が吹いている状態です。

ゆえに小さく飛ばされやすい試験サンプルは試験が終わって試験室を開けて中を確認すると、あちこちに飛んでしまいグチャグチャになることは多いです。

飛んでいきそうな試験サンプルは予め試験サンプルが飛んでいかないように固定する、または籠で蓋をするなどの配慮が大切です。

まとめ

熱衝撃試験装置の種類と特徴

1.気槽式ダンパー切り替え方式(最もポピュラー)
2.気槽式試験サンプル移動方式(欧米ではポピュラー)
3.液槽式試験サンプル移動方式(弱点を早く見つけるのに有効)

4つの絶対ダメな使い方

1.試験サンプルは風の流れを妨げないように装置内に置くこと
2.試験サンプルの熱容量は小さくすること!3.試験サンプルは試験室の床に直置きしない!4.試験サンプルは風で飛んでいかないように配慮すること!
走る園児
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