みなさんはリレーを知っていますか?
リレーとは電動のスイッチです。
スイッチは指で押して、ONとOFFを切り替えますが、
リレーは指で押さなくても電気の力でONとOFFを切り替えることができます。
車や電化製品などには多くのリレーが使われています。

今回はリレーでよく起きる不具合の
原因と対策を解説しますね。
不具合事象①:リレーの動作不良
リレーはコイルに電流を流すことで生じる電磁力を使って、スイッチの機構部を動かしてON/OFFを切り替えています。
この機構部がスムーズに動かなくなってしまう不具合を動作不良といいます。

動作不良となる原因の代表例を紹介しますね。
動作不良の原因1:フラックス侵入
リレーをプリント基板に半田で実装する際、半田を付きやすくするためにはんだ付けする部分にフラックという液体をスプレーします。
フラックスは主成分がアルコールと樹脂なので、アルコールが蒸発した後は樹脂が残ります。
フラックスをスプレーする際にフラックスがリレーの内部に侵入するとアルコールが蒸発し固着した樹脂が残留します。
この残留した樹脂が機構部に付着すると、ON/OFFの動作が鈍くなるのがフラックスによる動作不良です。
もう少しフラックスがリレー内部に入るメカニズムを詳しく説明します。
リレーをプリント基板にフロー半田で実装する際には、フラックスを基板やリレーに噴流塗布します。
通常フラックスの噴流塗布の液面は高いので、フラックスがリレーのケースにかかる場合があります。
フラックスがリレーのケースにかかると、フラックスはリレーのケースとベースの間からリレー内部に侵入してしまい、リレー内部の摺動部にフラックスが付着することで、動作不良に至ります。
フラックスによる動作不良の対策
- フラックスの液面管理(リレーのケース面にフラックスが付着しないように)
- フラックスの液面管理が難しい場合には、密閉性の高いリレーに変更する。
動作不良の原因2:硝酸生成
リレー内部の金属材料でつくられた摺動部品に硝酸が付着し腐食することでリレーの動作がスムーズでなくなる不具合です。
硝酸はリレーの外部から侵入したのではなく、リレー内部で生成されます。

リレー内部で硝酸が生成されるメカニズムを説明します。
空気は主に窒素(N2)と酸素(O2)が主成分ですが、リレーが負荷開閉をすることで接点間に生じるアーク放電のエネルギーによって、二酸化窒素(NO2)が生成されます。
さらに空気中の水蒸気(H2O)と反応して硝酸(HNO3)になります。
N2+2O2→2NO2
3NO2+H2O→2HNO3+NO
硝酸は金属に対して腐食性があるため、リレー内部の金属(鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)など)を腐食させてしまいます。
対策
- アーク放電が起こらないように負荷通電状態で接点を開かない。もしくはアーク・キラー(コンデンサと抵抗を直列に接続したもの)を付加する。【硝酸を生成するエネルギー低減】
- 高湿度の環境で使用しない。【水蒸気を減らす】
- 解放型のリレーにする。(二酸化窒素が生成されても解放されているので硝酸にならない)
接点の接触抵抗増
リレーは電気抵抗が低い金属(一般に銀)で作られた接点と呼ばれる半球面上の部品を接触させることでON、接点を離すことでOFFにしています。
しかし、この接点の抵抗値が上昇して正常にONしない不具合があります。

この不具合を接点の接触抵抗増と呼ばれている不具合であり、様々な原因があります。
ブラックパウダー
接点の表面に黒い粉末状の異物(ブラックパウダー)が溜まることで接点の接触抵抗が増す不具合です。
原因
この接点の表面に溜まるブラックパウダーは接点周囲に存在している有機ガスが接点開閉時のアークエネルギーで燃え残った煤です。
有機ガスの主成分は炭素(C)と水素(H)なので、完全燃焼すれば、二酸化炭素(CO2)と水(H2O)になり、ブラックパウダーは生成されません。
また、反対に全く燃焼しない場合もブラックパウダーは全く生成されません。
対策
- 有機ガスを低減させる。 有機ガスが発生する原因は主にリレーの樹脂部品です。 有機ガス(アウトガス)の発生が少ない樹脂部品で作られたリレーを選ぶようにしましょう。 リレーメーカのカタログや営業に確認するとよいでしょう。
- 接点開閉のアークを低減させる。 有機ガスが燃焼しない小さなエネルギーであればブラックパウダーは生成しません。
- 2とは全く逆ですが、接点開閉のアークエネルギーを大きくすることも有効です。 アークエネルギーを大きくすると有機ガスは完全燃焼し易くなるため、有機ガスは二酸化炭素と水になり、ブラックパウダーは生成されません。
グレーパウダー <シリコーン酸化物>
接点の表面に灰色の粉末状の異物(グレーパウダー)が付着することで生じる接点の接触抵抗が増す不具合。
原因
ブラックパウダーは有機ガスの不完全燃焼による煤が主成分でしたが、グレーパウダーは非常に電気絶縁性の高い酸化ケイ素(SiO2)が主成分です。
リレー外部の雰囲気空気に存在するシリコーンガスが原因です。
リレー外部のシリコーンガスがリレーのケース樹脂を透過したり、勘合部から侵入し、リレー内部で接点のアークエネルギーでシリコーンガスが酸化され酸化ケイ素が生成されます。
この酸化ケイ素はとても電気絶縁性が高い性質があるため、微量でも接点上に生成してしまうと接触抵抗が急増して不具合になります。
対策
- シリコーンガスの発生源をリレーの近傍に置かない。シリコーンガスはシリコーンゴム、シリコーン接着剤、シリコーンオイル、シリコーングリスなどシリコーンを含む様々な物質から発生します。近傍からの除去が難しい場合はガス化し易い低分子量のシリコーン(低分子シロキサン)を含まないシリコーンに変更することでも対策効果が期待できます。
- シリコーンが外部から入り難いリレーに変更する。ハーメチックやプラシールなど外気がリレー内部に侵入し難いリレーに見直すことでも対策効果が期待できます。
- 接点開閉のアークを低減させる。 シリコーンガスが酸化しない小さなエネルギーであればグレーパウダーは生成しません。
接点腐食<硫化、塩化>
接点は一般に電気抵抗が低い銀を主成分とした金属で作られています。
この接点金属の銀が腐食することで、抵抗値が増加して不具合を起こします。
なお、この接点金属が腐食した腐食膜は弱く剥がれやすいのですが、微小負荷条件(アークエネルギー小)のリレーでは接点の腐食膜が剥がれず残り、不具合が顕在化し易いです。
硫化
温泉地の硫化水素、硫黄架橋されたゴムに残留している遊離硫黄、段ボールや紙に残るパルプ製造時に添加した硫黄分など自然環境や工業製品から接点の銀を硫化腐食させる硫黄ガスが多く発生しています。
これら硫黄ガスが発生する環境や工業材料がリレー近傍に存在することで接点の銀は容易に硫化腐食を起こします。
塩化
塩素ガスが発生している環境や工業材料の近くはもとより、海近くの環境でリレーが使用されると空気中に海水由来のミスト(NaCl溶液)が漂っており、これがリレー内部に入り接点に付着することで接点の銀は容易に塩化腐食を起こします。
対策
- 硫化ガスや塩化ガスが外部から入り難いリレーに変更する。ハーメチックやプラシールなど外気がリレー内部に侵入し難いリレーに見直すことでも対策効果が期待できます。
- 接点の開閉頻度を増す。 接点を開閉すると接点同士のワイピングにより接点表面の腐食膜は剥がれ落ちる効果が期待できることから、開閉頻度を増すことでより酸化膜の除去効果が期待できる。
- 負荷電流を大きくする。 負荷電流を大きくすることでアークエネルギーも大きくなり、接点表面の腐食膜をアーク放電で除去する効果が期待できる。

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