いろいろな物をくっつけることができる便利な接着剤!
でも、せっかく接着したのに剥がれてしまった!!
なんて経験された方も多いのではないでしょうか?
今回は接着剤が剥がれた場合に役立つ知識です。

接着剤が剥がれる原因とその調査方法、
対策について分かり易く解説します。
・新人の技術者
・技術者として成長したい方
・接着剤が剥がれて困っている方
接着剤剥がれの3つの原因
接着剤が剥がれる原因は3つあります。

接着剤が剥がれた場合、
どのタイプの剥がれかを調べることが重要だよ。
原因が違うので対策も違うんだよ。
タイプ①:界面剥離(かいめんはくり)
下の図のように被接着物と接着剤の接触面(界面)で剥がれるタイプの剥がれです。

界面剥離
界面剥離かどうかの見極め方
剥がれた原因が界面剥離かを確認する方法は、剥がれた2つの面を観察するだけです
剥がれた片方の面のほぼ全面が被接着物の面になっていて、
そして、残るもう片方の面は、ほぼ全面が接着剤の面の場合は、被接着物と接着剤の接触面(界面)で剥がてれいることになり、界面隔離であると判断できます。
界面剥離は接着剤と被接着物の接触面で剥がれるので、
被接着物の面と接着剤の面がきれいに分かれるのが特徴です。
界面剥離になる原因
界面剥離になる原因は、
「接着を阻害するモノが界面に存在している」ために起こります。
つまり、被接着面が汚れている可能性が高いのです。
汚れの原因はさまざまなのですが、油、塵埃(じんあい)が表面に付着していることが多いです。
界面剥離の対策
汚れを拭き取ることで改善します。
アルコールを含ませた綺麗な布で拭き取ると良いでしょう。
アルコールは油と水のどちらとも相性が良いので、殆どの汚れを綺麗に拭き取ることができます。
界面剥離の面に残った接着剤は、きれいに剝がしてからアルコールで拭き取ってください。

それでは、界面剥離の原因となった汚れが
何かを調べる方法も参考までに紹介しますね。
汚れが分かれば、根本対策ができます
界面剥離の原因(汚れ)が何か調べる方法
1)剥離面を観察する

目で見ることが大切ですよ。
剥離面は2つあるので、必ず2つとも観察しましょう。
異物はどちらの面に残っているかわからないので
剥離面は必ず2つとも観察することが大切です。
形態観察は目視か、または顕微鏡、電子顕微鏡を用いて行います。
2)剥離面を分析する

形態観察で異物を見つけた場合はもちろんだけど、
見つからなかった場合も分析することで異物が
見つかる可能性はあるよ
油などの液体が原因の場合には形態観察では発見することは困難です。
念のため、剥離面(もちろん2面ともに)を分析して
接着剤や被接着物以外の物質が検出されないか?を確認することが大切です。
もちろん、形態観察で異物が発見できた場合は、
その異物だけを分析することで原因を正確に把握することができるので分析はとても強力な原因特定の手段です。
表面分析ではEDX、FT-IR、顕微IRのような分析機器を使用するのが一般的です。
タイプ②:接着剤層の破壊(凝集破壊)
接着剤層の破壊の症状は接着剤が割れて剥がれる剥離です。
凝集破壊かどうかを調べる方法は、これも界面剥離と同じく剥がれた2つの面をじっくり観察することが重要です。
接着剤が剥がれた面の両方ともに接着剤が残っていたら接着剤層の破壊。つまり凝集破壊と判断することができます。
接着剤層の破壊(凝集破壊)の原因
この接着剤層の破壊になる原因は「接着剤層の強度不足」です。

接着剤層の強度不足になる原因は次の通りです。
①接着剤の硬化不足
接着剤が十分に硬化しておらず、接着剤本来の強度が得られていない場合です。
②接着剤自体が劣化
接着剤もプラスチックと同じ高分子材料なので、劣化は避けられません。
使用環境が悪く、接着剤が劣化した場合には接着剤の強度が低下してしまいます。
接着剤層の破壊(凝集破壊)の対策
まずは硬化不十分を想定して、使用している接着剤が十分に硬化するまで
非接着物が動かないようにしっかり固定した上で放置しましょう。

硬化不良は硬化時間不足だけでなく、
硬化前に非接着物を触ったことで接着不良になる場合も多いですよ。
原因特定の手段
接着剤の硬化不足かどうかを調べるには、まず硬化条件が適当であったかを確認します。
熱硬化式の接着剤であれば温度が十分であったかどうか?特に被接着物の熱容量が大きい場合には温度が想定しているよりも低い場合があるので要注意です。
接着剤が劣化しているかを判断するには、様々な化学分析が必須です。
一例を挙げると、分子量分布(GPC)、構造解析(FT-IR、NMR、XPS)を行うことで判断することができます。
接着剤が劣化する要因
加水分解、紫外線(日光)、酸、アルカリ、熱
これらのストレスが過剰に加わっていないか使用環境を確認しましょう。
タイプ③:被接着物の破壊(凝集破壊)
被接着物の破壊の症状は被接着物が割れて剥がれる剥離です。
剥がれた2つの面を観察して、両方とも被接着物の場合は、被接着物の破壊による剥離と判断することができます。
被接着物の破壊(凝集破壊)の原因
この被接着物の破壊になる原因は「被接着物の強度不足」です。
被接着物の強度が不足する原因は、被接着物の劣化の場合がほとんどです。
被接着物の破壊(凝集破壊)の対策
非接着物の強度よりも接着剤の強度が強いために非接着物が壊れているのですから、接着強度は十分です。
非接着物の強度UPをするか?
それとも非接着物の強度以下の力しかかからないように使い方を見直すことで対策できます。
まとめ
接着剥がれの原因は3つ
①界面剥離、②凝集破壊(接着剤層の破壊)、③凝集破壊(被接着物の破壊)

剥離面を観察して、どの原因かをはっきりさせた上で、原因を観察や化学分析を駆使して突き止め、改善させることが重要です。
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