皆さんは偏光板という板をご存じでしょうか?
サングラスやリモコンや電卓の液晶画面、スマホやTVなど
身の回りにある色々なものに偏光板は使われています。

今回は偏光板の機能、構造や原理をわかり易く解説します
偏光板の機能
偏光板の機能は文字の通りです。
光を偏(かたよ)らせる機能です。
光を偏らせる??
光は波の性質があります。
光は一方向の波ではなくいろいろな方向の波が混じった波なのです。
偏光板は、このいろいろな向きの波から、ひとつの向きの波だけに整えます。
このいろいろな波から一方向の波だけにすることを偏光すると言います。

もう少しわかり易く
偏光するとはどのようなことかを
イラストを使って説明します。
下図のように光は縦波と横波の2方向だけの波が混じっているとします。
(実際は縦、横だけでなく斜めなどいろんな方向の波が混じっています)
このような2方向の波が混じっている光を偏光板に通すと1方向の光が偏光板に遮断されて、偏光板から出てくる光は1方向のみの波の光になります。
偏光板は一部の方向の波しか通せません。
どのようにして偏光板は偏光しているのでしょうか?

偏光板の構造から説明しますね。
偏光板の構造
偏光板の構造は、偏光層(PVA層)を2枚の保護層(TAC層)でサンドイッチした構造になっています。

偏光層が偏光板の心臓部だよ
偏光層の作り方と偏光メカニズム
偏光層は、PVA(ポリビニルアルコール)というプラスチックで作られています。
このPVA樹脂は、多くの家庭で使っています。
ほとんどの洗濯ノリはPVAを水で溶かしたものです
洗濯ノリに使われていることからも、わかるようにPVAはとても水に溶けやすい性質があります。
偏光層は洗濯ノリ(水とPVAを混ぜてドロドロになった溶液)にヨウ素分子を混ぜて作ります。
ドロドロのPVA水の中で、ヨウ素分子はバラバラの方向を向いていますが、
乾燥させながら引っ張ることで、全てのヨウ素分子が同じ方向を向きます。
この状態のまま乾燥させると偏光板の出来上がりです。
ヨウ素分子と同じ向きの光(可視光線)の波がぶつかると、ヨウ素分子が共振(振動して)して光の波を吸収(熱エネルギーに変換)します。
ヨウ素分子に吸収される光の波はヨウ素分子と同じ方向の波だけなので、その他の向きの光の波は偏光層を透過します。

これが偏光層が光を偏光するメカニズムです。
保護層の役割り
偏光層は水に溶けやすいPVAが主成分なので、湿気が多い環境ではPVAは吸湿してドロドロになってしまいます。
PVAが吸湿してドロドロになると同じ方向を向いていたヨウ素分子がバラバラの向きになってしまい偏光機能が消失します。
偏光層は水や湿気から保護してあげる必要があるのです。
保護層とは
偏光層(PVA層)をサンドイッチしている2枚の保護層(TAC層)は水に弱い偏光層を水から守る役割りがあります。
保護層はTAC(トリアセチルセルロース)と呼ばれるプラスチックでできています。
TACはPVAよりは水に耐性がありますが、高温多湿の環境などに長時間放置するとTAC層は加水分解してセルロースと酢酸に分解します。
このようにTAC層が分解すると酢酸ができることから、とても酸っぱい匂いがします。
TAC層が分解して酸っぱくなるので、ビネガー(酢)シンドロームと言われています。
まとめ
・偏光板は保護層2枚で偏光層をサンドイッチにした構造をしている
・偏光層はヨウ素分子が一方向に並んでいるので、一方向の光が共振して熱エネルギーとなり吸収される。これが偏光のメカニズム。
・偏光層はとても水に弱い
・偏光層を水から守っている保護層も長時間高温多湿の環境に晒されると加水分化して酢酸ができるので酸っぱくなる。
如何でしたか?
偏光板について解説しました。
偏光板はスマホ、PC画面、リモコン画面、サングラスなどなど
身の回りにはたくさんありますので、じっくり観察してみても面白いですね。
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