はじめに:「この材料、どれくらいで伸びるんだろう?」

みなさん
「暑さで物がのびる」と聞いたことありませんか?
例えば、夏に電線がたるんでいるのを見たことがある人もいるかもしれません。
これは温度が上がると電線が熱膨張するからです。
この「材料が温度でどのくらい伸び縮みするか!」を正確に測るための分析方法が、
TMA(熱機械分析/Thermo Mechanical Analysis)です。
TMA分析の測定原理をざっくり説明!
TMAは、こんな感じの測定です
要素 | 内容 |
---|---|
試料(材料) | 小さな板や棒状にした樹脂、金属、フィルムなど |
プローブ(測定子) | 棒や針のような部品で、試料の上に軽くのせます |
加熱装置 | 一定の速度で温度を上げていきます |
測定すること | 温度変化に対して、試料がどれくらい「のびる(膨張)」かを測定 |
ポイントは
温度を上げる
試料の長さや厚さがどう変化するかを測る
変化の仕方から材料の性質がわかる
どんなデータが取れるの?
TMAによる分析結果は
横軸:温度(℃)/縦軸:長さの変化(µm)
のグラフです
このグラフからわかることは以下です
データからわかること | 内容 |
---|---|
線膨張係数(CTE) | 材料が1℃上がるとどれくらい伸びるか |
ガラス転移温度(Tg) | 樹脂がガラスのように硬くもろい状態から、ゴムのように柔らかくなる転換点のこと |
融点(Tm) | 結晶性材料が溶け始める温度 |
軟化点 | 試料が変形し始める温度 |
具体例①:チョコレート vs プラスチック
🍫 チョコレートをTMAで測ったら?
30℃前後で急に長さが変わる → これは溶け始める温度
この急激な変化は「融点」のサインです
チョコレートをTMA分析した場合、以下のようなグラフがデータとして得られます。
🧱 プラスチック(ポリカーボネート)を測ってみたら?
130未満は傾きが小さい(ほとんど長さが変化しない:ガラス状態(カチカチ))
130〜145℃で傾きが一気に大きくなる(長さが激しく変化する)→ これがガラス転移点(Tg)です
145℃以上では比較的傾きが大きい(長さが変化する:ゴム状態(フニャフニャ))
つまり、プラスチックのヤング率は温度で大きく変化します

使用環境の温度を意識した材料選定が重要ですね
TMAでわかることは? どんな場面で使われる?
✅ 製品設計での耐熱性チェック
→ どの温度まで使える?(耐熱温度)
✅ 材料選定の比較
→ A材料とB材料、どちらが熱で変形しにくい?
✅ 品質管理
→ 同じロットでもちゃんと同じTgが出ている?
まとめ:TMA分析って、材料の「熱に対するクセ」がわかる!
TMAは、材料が熱でどう変化するかを見るための分析です。
日常的な現象(夏のたるんだ電線、暑さでやわらかくなるプラスチック)を
「科学的に・定量的に」見ることができるのが魅力です。
🔍 おまけ:TMAと似ているけどちょっと違う分析法
分析名 | 測るもの | 一言で言うと… |
---|---|---|
DSC | 熱の出入り | どの温度で反応や融解が起きる? |
TGA | 重さの変化 | 焼いたらどれだけ減る? |
DMA | 力のかかり方と変形 | ゴムみたいな性質を測りたいとき |

如何ですか?
TMA分析について、何となくでも理解してもらえたのでは?
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